ギターミュージックとしての新しい提案をしているので、そこを楽しんで欲しい / 沖仁

15周年記念となるアルバム「クラシコ」をリリースした沖仁さん。あえて馴染みの深い曲をえらんだといいうカバー曲の選択や、フラメンコの楽しみ方、そして情景が見える楽曲制作の話と、ニューアルバムについてあれこれ話を聞いた。

--『クラシコ』は15周年記念の節目的なアルバムですが、どういった作品にしようと考えていましたか? 

沖:気が付いたら制作に4年くらいかかってしまったのですが、アルバム用にいろいろな曲をまとめていく中で、どんなコンセプトにしようかと考えていて。先駆けてレコーディングした「Someone to watch over me」で大編成のストリングスをフィーチャーしたアレンジにしたことが、アルバムのテーマをクラシカルな雰囲気にしようと思ったきっかけになりました。クラシカルなアレンジを施すという手法はこれまでやったことがなかったし、同時にここ数年、ストリングスのセクションやフル・オーケストラと共演する機会が続いたんですよ。


 --そうだったのですね。 

沖:最初のうちは(オーケストラの人たちと)一緒に演るのは難しいなと思っていました。リズム感覚のギャップがかなりあって共演するたびに悩ましくて。僕の感覚でいうとクラシックの人たちの奏で方って歌に近いんです。呼吸でリズムを感じているというか、僕にとってはワンテンポ遅れてくる感覚でアタマがズレる。僕ら(フラメンコ)の音楽はいつでもパルマ(手拍子)が鳴っていて、それってわりとクリックというか、デジタルの感じ方に近い。それに対してクラシックの人たちは、ものすごい大きな波として、リズムを捉えていて、全員で息を吸って〜ここで吐いてのような、全員で歌を唄っているようなリズムだと僕は感じました。でも(共演の)回数を重ねるたびにツボがわかってきて、これはイケると!


--クラシックの人たちとの共演が今回のアルバムの楽曲作りに影響を与えた面はありますでしょうか?

沖:共演していく中で、フラメンコの中にも、そういった歌う要素もあるんだって自分の中でも気付いていったんです。クラシックの場合、そこ(歌う要素)が僕には際立って聞こえたんです。楽曲の中で(ギターの)歌い方の呼吸が深くなったり、テンポ感を自分で伸び縮みさせるようになりました。今回のアルバムの中でもチェロと一緒に演った「Trémolo [トレモロ] ~お別れの歌~」はその感じがよく出ていますね。どんなジャンルにも“歌”はあるというのを、あらためて感じました。


--アルバムの中のカバー曲を選ぶ基準は何だったのでしょうか? 

沖:みんなが知っている、手垢が付いている曲をあえて選んでいます。そういった曲を僕が取り上げれば、誰もやらなかったようなアプローチになるので、知られている曲を裏切っていく方向でいこうと。


 --確かに「禁じられた遊び」などは、定番中の定番ですものね。 

沖:そうです。ああいった定番曲を誰もやったことのないアレンジで演奏するのを面白がってくれたらと、期待しています。もちろん選曲のときにはフラメンコギターとの相性も考えますよ。(フラメンコギターが)歌いやすいフレージングやコード進行というものがあるのですが、そこはアレンジし始めないとわからないところもありますね。


 --なるほど。どういった曲がフラメンコと相性がいいのでしょうか? 

沖:僕の個人的な感じですけど、コード進行ができるだけシンプルな曲の方がいろいろとアレンジし易いです。ガチガチに決まっている曲だと、アレンジの施す余白がないので。「禁じられた遊び」は3コードだし、シンプルな曲の方がやりがいはあります。


 --デジタル的な面もフラメンコにはあるという話がありましたが「Estrella【エストレージャ】〜星空と涙〜」などを聴くとフラメンコにはダンスやクラブミュージックとの共通性も感じられますね。 沖:ダンスミュージックにスパニッシュやラテン側が寄せていくのは定番な手法なのですが、フラメンコの方にダンスミュージック的なニュアンスを持たせるのは、センスもあるだろうけど、なかなか成功例が少ないです。今回「Estrella【エストレージャ】〜星空と涙〜」はSILENT POETSの下田法晴さんが素晴らしいセンスを持っていたからこそ、成立した曲だと思っています。


 --亀田誠治さんがプロデュースされた「Tierra【ティエラ】〜大地行進曲〜con 葉加瀬太郎」はメロディの起承転結がしっかりあってボーカル曲のような印象でした。 

沖:僕が作る曲はついつい歌モノっぽいものになってしまうんです。昔からですけど、誰かが歌っている場面をイメージしながら曲を作ってしまう癖があって、その歌のラインをギターに置き換えているようなところもあるんです。「Tierra [ティエラ] 〜大地行進曲〜」は葉加瀬さんがバイオリンで同じメロディを弾いてくれているので、より歌モノっぽさが極まったところがありますね。バイオリンは単旋律で声に近い楽器ですから余計にそう感じるだろうし、僕の中でデュエットというイメージもありました。


 --今回、「Tierra [ティエラ] 〜大地行進曲〜 con 葉加瀬太郎」を亀田さんとご一緒にやられたきっかけは? 沖:亀田さんとはずっと一緒に仕事をしたかったんです、亀田さんのプロジェクトには何度も呼んでいただいているのですが、僕の楽曲をがっつりプロデュースしてもらうことが夢でした。今回いろいろな曲をすでに(亀田さんに)聴かせていて、その中でも“「Tierra [ティエラ] 〜大地行進曲〜」がダントツにいいね”ということだったので、この曲をプロデュースしてもらおうと。亀田さんの方からフィーチャリングで葉加瀬さんを呼ぼうというアイデアもあって。


 --この楽曲には、どういう情景的なイメージがあったのでしょうか?

 沖:僕の中で、この楽曲は都会的なイメージを持っていたのですが、亀田さんからは“郷愁“というキーワードが出てきて、(亀田さんから)そう言われたら、郷愁にしか思えなくなってきて(笑)。帰りたいけど、帰りたい気持ちや、限りない大地に夕日が沈んでいくような…、そんなイメージになってきました。


 --沖さんは楽曲を作るとき、景色や情景が浮かんでくるとお聞きしましたが?

 沖:音以外のイメージが欲しいです。思い出や風景だったり、人などの対象があることで曲になっていく感じがあります。僕の音楽は視覚的だと思うんです。無限に選択肢がある中で、イメージがないと決められないというか、どうとでも捉えられてしまう。確固たるゆらぎのないイメージがあることで、楽曲として形になっていくんです。僕が日本人だからかもしれないですが、あまり抽象的なものに思いを馳せられないというか、イメージがないと(曲が)消えてしまいます。自分が実際に体験したり、お会いした人だったり、そこに思い入れがないと(曲に)アクセスできなくなってしまうんです。


 --今回のアルバムではライブでのお客さんとのやりとりの中で曲が進化していったとお聞きしましたが?

 沖:以前はレコーディングをしてからコンサートで演奏するという形をとっていたのですが、今回は順番がいつの間にか逆転していて。人に聴いてもらうことで初めて見てくることがありました。あえて8割くらいの完成度で披露してしまう感じにして、リスナーの反応を見ながら“ここはもっとこうした方がいい”や“あの部分はどうやって弾いたんだろう”って考えていきます。リスナーのパワーはすごくて、ダメ出しや、もっと行け!だったり、観客の反応をヒントにアレンジが進化していった感じです。


--フラメンコの魅力はなんでしょうか?

 沖:僕が感じている魅力とみなさんでは違うと思うのですが、フラメンコってとても人間くさくて、人の素朴な営みの原点を表現していると思っています。でも以前『ユーリ!!! on ICE』というフィギュアスケートを題材にしたアニメの中で、主人公の勝生勇利のショートプログラム用の楽曲(「愛について〜Eros〜」)に参加させていただいた印象が強いせいか、一般的にはエロスみたいなイメージがあるらしくて(笑)。


 --今回のアルバムはどんな楽しみ方をしたらよいでしょうか?

 沖:今回は定番のスタンダードなナンバーをたくさんカバーしているので、どんなアレンジになっているかを楽しんで欲しいですね。もうひとつ隠れたテーマとしてはギターミュージックとしての新しい提案をしているつもりです。ほとんどの曲はギターソロを核にしていて、ソロギター曲としても成り立つアレンジをしているので、そこを楽しんで欲しいですね。  


沖仁 公式サイト

関連インタビュー:

【HEADPHONE TALK】ヘッドフォンは自分が今どういうタッチで弾いているかが、わかるものでないとダメなんです。/ 沖仁


Clásico[クラシコ] / 沖仁 VICL-64793 

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1. Spain / 2. マドリードの花市場 / 3. Tierra 〔ティエラ〕 ~大地行進曲~ con 葉加瀬太郎 / 4. 禁じられた遊び / 5. Estrellas 〔エストレージャ〕 ~星空と涙~ / 6. アグヘータを訪ねて / 7. Al norte-Al sur 〔アル・ノルテ-アル・スール〕


沖仁 - 「Tierra [ティエラ] ~大地行進曲~ con 葉加瀬太郎」Music Video(YouTube ver.


DEBUT 15th ANNIVERSARY 沖仁 CONCERT TOUR 2017 Clásico

11月10日(金)宮城・電力ホール

11月16日(木)北海道・札幌市教育文化会館 大ホール

11月24日(金)大阪・サンケイホールブリーゼ

11月29日(水)愛知・名古屋市芸術創造センター 

12月09日(土)神奈川・鎌倉芸術館 大ホール

12月16日(土)福岡・電気ビルみらいホール 

12月23日(土)東京・渋谷区文化総合センター 大和田さくらホール

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