FUKIにとっての「WITH U」プロデューサーEIGO氏との間に音楽が生まれるまで
FUKIのニューシングル「With U」は身近にいる大切な人への感謝の気持ちを歌った父の日のプレゼントにピッタリの楽曲。今回のインタビューはFUKIのプロデューサーであるEIGO氏を迎え、二人の出会いから、楽曲の制作現場の雰囲気までをお聞きしました。彼女にとって父親のような存在であり、そしてよき理解者でもあるEIGO氏との楽しい雰囲気が端はしから伝わってきます。
– さっそくですが、お二人の出会いのきっかけを教えてください。
FUKI:ひとりで活動したときに、もう煮詰まってしまっていた時期があって。あるシンガーの方を通してEIGOさんを紹介していただいたんです。
EIGO:僕はその頃、ちょうどシェネルの「ビリーヴ」を制作していたときで、どうしても仮歌が必要になったんです。シェネル自身はずっとLAにいるアーティストなので、当然お願いはできないし、どうしよう!? って。どうしようもなくなって締切の前日に後輩のシンガーSWEEPに電話して「高音が出て、いまからウチに来て歌ってくれる女の子を紹介して」って連れてこられたのがFUKIちゃんだったんです。それがきっかけで会うようになって。彼女から「私もシンガーをやっているんです」って。
– 最初はFUKIさんがどういう子なのかも知らなかったんですね。
EIGO:まったく知らなかった(笑)。
– お互い最初の印象は?
FUKI:えっ、見た目が怖そう…でしたね(笑)。でもしゃべったらやさしかったです。
EIGO:へんちくりんなのが来たなって印象でしたね。
– EIGOさんがFUKIさんと一緒にやろうと思ったきっかけは何だったんでしょう?
EIGO:まず僕が自分から率先して関わらせてもらっているプロジェクトに関しては絶対的に声にこだわっているんです。声だけは良くならないんです。歌なんていうものは、練習次第で上手くなるだろうし、楽器も機械を使えばどうにでもなるんですけど、基本的に声はどうにもならない。ので、そういう意味で彼女の声は魅力的だったんです。
– ずばりFUKIさんの声の魅力とは?
EIGO:声が良い、悪いというのは好みだと思うんです。僕にとって良いと思わない声も他の人にとっては良い声だったりもするので、僕は良い声っていう言い方は好きじゃない。FUKIちゃんもそうですし、僕の好きなアーティストの声は伝達速度が速いんです。一回聴いただけで歌詞が入ってくるとか、メロディが解りやすく聴こえるとか、一度聴いただけで「こういう曲」で「こんな歌詞」で「こういう感情」だってわかる、そういうのが伝達速度の速い声で、FUKIちゃんの持っているその部分は天性のもので凄くいいなと思う。だから、作り甲斐があります。
– FUKIさんはEIGOさんと出会う前まで、行き詰って悩んでいたとのことですが?
FUKI:EIGOさんが手掛けているシェネルさんや、とくに私は平井大さんが大好きで、出会う前から(EIGOさんのことは)知っていたんです。(平井大さんの)ライブもめちゃ通っていて…。だから仮歌で呼ばれたときには「あのEIGOさん!?」って。これは行くしかないって、デモをさっと渡して。EIGOさんの作る音楽がめちゃ好きだったので、一緒にやりたかったから。「チャンスはこんなところに転がっとるのか!」って。運が良かったんです。
– 一緒にやっていこうと決めたとき、最初にしたことは?
EIGO:彼女の場合、けっこうとっ散らかっていて。声が良いから、みんな彼女にいろいろなことをやらせたがるんです。ピアノを弾きながら、踊ってみたり…、「オマエ、何がしたいんだよって(笑)」。本人もとっ散らかったものをどうしていいかわからない状態だったので、そこからです。まずは二人でいろいろな音楽を聴きました。「オレこの曲好きなんだけど」「私はこの曲がいい!」ってi-phoneに入っている曲をジャンケンのように出し合ったり…。そういったことで共通点を見つけ出して、いちばん彼女が本当に伝えたいことや、伝えたいサウンドが何なのか探っていったんです。そこから引き算していったのが最初の作業ですね。どんどん余計なものをそぎ落としていったんです。
FUKI:すごいシンプルにはなりましたね。「ただ音楽が好き、ただ歌えればいい」って気持ちだけでやってきていて、いろいろなことを言われて、やりたいことがわからなくなってきていたけど、EIGOさんとの出会いで、私の好きな音楽ややりたいことも全部、意志の疎通ができたので、すべて任せて大丈夫だって。
– 歌詞の面でもお二人で作業していますよね。
EIGO:歌詞も同じ作業ですね。言いたいことがたくさんあるから、それを整理していく。例えば「落ち込んでいるとき飴玉くれたよね」とか「雨のとき傘を貸してくれたよね」という、いろいろなエピソードを話ながら、「でも、それって何なの?」って。伝えたいことがたくさんあるから、どんどん曲の中に入ってきちゃうんです。僕は「それって何なの?」って聴いている人の立場で、彼女を問い詰めいていくんです。
– その作業は楽しいですか?
FUKI:楽しいです。いろいろな発見があります。「これに対して、こんな言い方で返してくるんだ」って。
やっぱりEIGOさんは凄いです。いつも思っています。
– EIGOさんのプロデュースの原点って?
EIGO:もともとラッパーなので、ヒップホップをやっていたときに、いちばん感銘を受けたのは金のチェーンでもなく、ディスり合いでもなく、ある種、良いものをルールに縛られずコラージュしていく感じ。
僕はヒップホップのそういうメンタリティが好きで。それが今も根本にあるんだと思います。僕はあまりコードとかも解らないし、鍵盤の前に座るとアタマが痛くなるくらいなので。理屈じゃなくてFEELでやっていく、そこがルーツですね。歌詞も同じです。僕は本も全然読まないし、難しい言葉が入っている曲も好きじゃないし(笑)。
– 実際の制作している現場の雰囲気ってどんな感じなんでしょう?
EIGO:ホームパーティです!ホームパーティって、そんなにちゃんと準備しないじゃないですか?とりあえずみんなが集まって、何かを持ち寄ったりして。向こうでポットラック(potluck)ってパーティの形式があるんですけど、それに近くて。持ち寄りパーティみたいな感覚です。例えばFUKIちゃんが歌詞の断片だけをノートに書いてきたり、僕だったら「こんなコードあるんだけど、どう?」だったり。そういうのが集まった瞬間に僕の物じゃなくなって、みんなの物になる。僕の持ってきたコードをFUKIちゃんが自由に煮るなり焼くなりしてもいいし、僕も歌詞に適当にメロディをつけてみたりね。だから全然仕事している感覚ないですよ。
FUKI:ない!本当にいつも遊びに来ている感覚なんです。実際にお菓子とか食べ物もたくさんおいてあるし。
EIGO:食べてばかりますよ。でも帰るときには、なんとなく曲が出来ているという。食べながら、雑談しながら、アーティストを胃袋から掴んでいくという。
– 聞いた話によるとEIGOさん、よく寝転がりながら作業しているそうですね?
EIGO:いやいや、だってスピーカーの前で背筋正して音楽を聴いているヤツなんていないよ。みんな家で聴くときは寝転がったり、掃除しながらだったりじゃない。そういう感覚で音楽と向き合っていないと、耳がダンボになっちゃう。めちゃ聴きすぎてしまって、どうでもいいことが気になってくる。どうでもいいことが気になってくると、大事なことを見落とすんですよ。エンジニアさんとか、みんな真面目に聴いているから、僕はリスナー代表として、申し訳ないけど、寝転がらせてもらっています…という屁理屈(笑)。
– さて、今回のシングル「With U」ですが、どんなイメージで作られたのでしょう?
FUKI:この曲は歌詞を先行して作っていきました。EIGOさんに「お父さん、お母さんに向けて歌詞を書いてきて」って課題を出されて。お父さん、お母さん、恋人に限らず、大切な人に向けてっていうイメージで書いていったんです。
– 日々そこにある、ありがとうを感じさせる内容だと思いました。
EIGO:まさしくそれが伝えたかった。日常にあるありがとうとか、おはようって大事じゃないですか?そういったものがちゃんと伝えられるような曲にしたかったんです。でも普通のラブソングにはしたくなくて。そう考えたときに彼女がいちばん、ありがとうを言いたいけど、照れくさくて言えない相手は誰だろう?って。よくスタジオ来て反省しているんです。「朝、(親を)ちょっと無視しちゃった」って(笑)。これは、その思いを親御さんに伝えるのが使命なんじゃないかって。
– 実際に両親のことを思って歌詞を書いたんでしょうか?
FUKI:そうです。もうそれしか考えないで書きました。本当に私は不器用で親に感謝の気持ちを言えないので。でもいちばん近くにいる人にこそ、伝えなきゃいけないなって、いつも思っているんです。
– 今後アルバムも控えていますが、これからどんな方向で楽曲を作っていくのでしょうか?
EIGO:FUKIちゃんが5年後、10年後に歌っていられればいいし、歌を嫌いにならないでいられるように関わってあげられたらいいなと思っています。
FUKI:EIGOさんとの作業はいままででいちばん楽しいです。音楽もいままででいちばん好きですね。ずっと付いていきます!
FUKI New Single 「With U」
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